チッパワトーク第3話です。
今回の話はチッパワに使われている素材と熔着技術の話。
チッパワの内部構造はこんな感じになっているのですが、ご覧のようにかなり薄いプラスチック壁となっています。
まずこの話をさせて頂く前に一つご説明させて頂きますと、中空ルアーの場合、プラスチック壁を薄くすればするほどアクションレスポンスが向上するという傾向があります。
その理由は単純で、ルアーの外殻部の重量が軽くなればなるほど軽快に動きやすくなるという事なんだと思います。
逆にプラスチック壁を薄くすればするほど、ルアーは耐久性を失っていきます。
パフォーマンスと耐久性・・・・この相反する二つの要素をどこでバランスを取っていくか?
強度と動きの限界点を見定め、強度を確保しながらも、無駄なぜい肉をそぎ落としていく作業がルアーのポテンシャルアップに必要不可欠となります。
ここで、チッパワの話に戻ります。
チッパワの場合、強度的にはおそらくこれ以上薄くできないレベルの薄い壁にしています。
ですが、日頃からチッパワをご使用の方はご存知かと思いますが、チッパワはそんな薄いボディーパーツで構成されているにも関わらず、かなり過酷に使ってもへこたれない耐久性を持っているかと思います。
なぜ、それが可能になったのか、それには二つの秘密があります。
一つ目の理由は使用しているプラスチック素材。
入手できる範囲内で最もグレードの高いプラスチックを使用しています。
これは単純にプラスチックのスペックが高い事が耐久性向上に貢献していると思います。
そして、二つ目の理由は左右のプラスチックパーツの溶着方法。
NLWのマスプロダクションルアーは全てソニックウェルディングという、超音波溶着技術が使われているのですが、この溶着方法を用いる事によって、非常に高い強度を持つ溶着が可能になります。
このソニックウェルディングの最大のメリットは次回のチッパワトークで予定している耐熱テストの話で更に詳しい話をさせて頂きたいと思いますが、
プラスチックの接合部を超音波の振動で溶かして溶着させる技術で、ルアーの耐衝撃性能はもちろん、耐熱性能も向上し、ルアーパーツの接合技術としてはかなり理想的な方法です。
が、デメリットもあり、その最大のデメリットになっているのが、超音波の振動を駆使して溶着する為、振動が伝達しにくい薄いパーツの溶着は苦手。
プラスチックルアーに使われているABS樹脂の場合、プラスチックの壁厚が1.5mmぐらいあればソニックウェルディングでも問題なく溶着が可能ですが、そこから壁厚を薄くしていこうとすると加速度的に難易度がアップしていきます。
チッパワの壁厚は1.2㎜なのですが、これはソニックウェルディングではかなり難易度が高いレベルの厚み。
この薄さの壁のルアーをソニックウェルディングできっちり溶着し、水漏れを起こさない事。
安定してこれらを行える工場を探すのに2年掛かりました。
NLWルアーの耐久性は、そんな技術と素材に支えられています。
余談になりますが、自分の場合、プロトモデルの段階のトライアルで、本金型による完成モデルのプラスチックパーツ重量を何グラムにしたいかというベンチマークをはっきりと見出して開発していますので、工場の高い技術は開発をスムーズに進行させてくれるだけではなく、更なる可能性の扉を開いてくれる強い力となってくれています。
チッパワトーク#3 End